☆恋人シリーズ番外編☆
魅惑の誕生日前夜
正臣バージョン
氷川雪乃作
はぁ・・・・・・・・・ 足が棒みてぇ・・・・・・・ その上、さっきから霙混じりの雪まで降ってきて、悴んだ指で、コートの襟を寄せようとしても、旨く指が動かない。 2月10日、明日は光一朗の誕生日。 学校が退けると俺はダッシュで街に繰り出して、デパートや、ファッションビルのウインドウを覗きながら、西に東へとウロウロしていた。 いったい、何を買えばいいのか・・・・・・・・ 予算は2万円ちょっと。 俺にしたら、すっごい大金だけど、いつもなんだかめっちゃ高そうなもんばっかり身につけている光一朗に何をやれば喜んで貰えるのか分からなくて、俺はまたしても溜息をつきながら、重い足を引きずって、次のウインドウへと向かった。 その俺の視線をこじんまりした海外雑貨店のウインドウにフッと引き留めたものがある。 しっとりとした、深紅の天鵞絨(ビロウド)の上に飾られたそれは、 上品な深い藍色のボディ。 細身のシルエット。 金属部分は渋いシルバー。 ヘビースモーカーってわけじゃないけど、光一朗は煙草も吸う。 毎日取り替えるネクタイなんかとは違って、ライターならずっと身につけていて貰えるし。 あ、でも、姉貴の奴、昔、旦那にやった、ダンヒルの金無垢のライター、確か10万以上するって自慢してなかったっけ? 俺はドキドキしながら、硝子面におでこをぴたりとくっつけて、そいつのちょこっと横にずれて影で見にくくなっているプライスカードを真剣に覗き込んだ。 「18000」 123...何回もゼロの数を数えた。確かに0は3つだけ。 よっしゃ!これなら買える。 急いで、店に入ろうとしたが、店の奥にデンと置かれてある、オールド・ファザー・クロックの針が8時ちょっと前を指していて、もうそんな時間なんだと改めて気がついた。 8時には毎日光一朗からの電話がかかってくる。 店の中で光一朗から電話が来たら恥ずかしいな、と思った俺は軒を連ねている店舗の陰に隠れて、携帯のボタンを押した。 ルルル・・・ルルル・・・・・・ 今夜は家にいると聞いたはずなのに、呼び出し音が何度も家人を呼ぶ。 あれ・・・・・・いないのかな?回線を切るボタンに指をかけたと同時に、 『もしもし・・・・・・』 やっと光一朗が出た。 れ・・・?光一朗の声はなんだか普段より低くてやけに艶っぽくないか?。 「あ、俺だけど・・・」 艶っぽさに、ドキッとして思わず、言葉が途切れた。 寝てたの起しちまったのかな?でもまだ8時前だよな・・・・?・? 『ああ、正臣かい?』 「うん。そう、俺。明日なんだけど・・・」 『明日、分かっているよ。誕生日を祝ってくれるんだ……』 「当たり前だろっ!それよか、なんか欲しいもんとかない?」 『え、何が欲しいって?正臣がプレゼントしてくれるものなら何だっていいんだよ。無理しなくていいからね。』 「む、無理なんかするわけねーだろ!んじゃ、夕方にはそっちに行くから。光一朗有給とってんだろ?俺、学校終わったらすぐに行くから」 『夕方から?分かったよ。待っているから……楽しみにしているよ』 「じゃぁな」 カチッとボタンを押して、俺はいそいそとさっきの雑貨店の中に入っていった。
お店の人に、誕生日プレゼントだと言ったら、カードをおまけに付けてくれて、「今ここでお書きしましょうか?」と言ってくれたのが、さすがにそこで書いてもらうのは恥ずかしくて、うちに持って帰ってきたのだ。 だから包装も自分でする事にして、紙とリボンも貰ってきた。 俺はまだ少し寒さで悴んでいる右手にペンを持ち、カードにお誕生日おめでとうと書いたあと、さっき買ったライターを左手の上でコロコロ弄んでから、シュポッと火を灯してみた。 蒼い炎が美しく揺れる。 俺はその小さな炎の美しさに、しばし、ボゥーと見とれていた。 過度のストレスや、緊張している時に炎をみると、人は軽いトランス状態に陥るのだという。 寒さと、疲れで、まいっていた俺はまさにそんな感じだったのかもしれない。 俺は炎を見つめた後、ほんの少し酔ったような気分でカードの続きを書いた。 署名のあとに、PSと・・・・・・・・・ |
Happy barthday 光一朗、誕生日おめでとう。 ライター気に入ってくれたら、嬉しいんだけどな。 正臣 PS:プレゼントは、ライターと俺の2個セット |
お客様各位
あすかさんのSSをいただいて、速攻で書いてみましたv翌日の誕生日が、楽しみですねぇ〜カードを受け取った、光一朗の反応やいかに、でしょうか(^-^)
あ、いらっしゃらないとは思いますが、正臣バージョンにも18禁を期待して下さったかた、もし、いらしたらごめんなさい〈笑〉