☆恋人シリーズ番外編☆

困惑の誕生日

裏300キリリク作品

正臣が僕の誕生日の日に珍しくうちにやってきた。  

どちらかというと食事に誘われるのではないかと期待していたのだが、どうも様子がおかしい。  

手には何も持たず、正臣は真っ黒な髪をサラサラと肩に落とし、印象深い黒い瞳を僕から逸らせる。  

なんだろう……  

どうしてこちらを見てくれないのだろう……  

まさかいくらなんでも僕の誕生日に別れ話などするはずは無いだろう……

フッと、僕はデジャブに襲われる・・・・・・・

この展開は僕が昨夜書いた夢物語にあまりにも極似してはいないか? 

そう思うと、罪悪感から正臣の顔がまともに見れない。

「正臣?」  

不安なこちらの気持ちを隠しながら僕がそう呼びかけると、ようやく恋人はこちらを向いた。

「たっ……誕生日なんだけどさ……」  

「……なんだい?」  

益々僕は不安に駆られながらもようやくそう言った。
まさか、まさか・・・・・・・・

「何が良いのか……分からなくて……その……」  

まさか、まさかね?

それともこれは僕が見ている都合のいい夢なのだろうか・・・・

「いいよ。そんな事は気にしなくても……そうだ、外で今から食事にでも出ようか?」  

馬鹿な考えを振り切るように僕はそう言った。

「じゃなくて……その……俺……」  

思い詰めたような黒い瞳に僕が映っている。

「変だね正臣……何かあったのかい?」  

変なのは僕のほうだ・・・・・・・・

正臣は次にこういうはず『プレゼントは俺だと・・・・』

次の言葉を、固唾を飲んで待ちわびた。  

頬を赤らめて俯いてしまった黒い瞳にはもう僕は映っていない。

「これ・・・誕生日プレゼント……」  

そう言った恋人の台詞に僕はすぐに声が出なかった。  

暫く言葉を失っていた僕に正臣が声をかけてきた。

「……嫌なのか……」  

ぶっきらぼうに言った正臣の視線がこちらを向いた。その瞳には落胆の色が見える。

「あ、違うんだ。……嬉しすぎて……驚いてしまってね」  

綺麗に包まれた小さな包み。

正臣のポケットからでてきたそれに落胆してしまった己を僕は大いに恥じた。

一生懸命選んでくれただろうそれを、僕は・・・・・・・・・

なんて、酷い男なのだろう。

「光一朗・・・・・俺、ごめんこんなものしか買えなくて・・・・・」

小さな声で項垂れる正臣が愛しい・・・・・・・

「違うんだ、ごめん・・・・・ごめん。正臣・・・」

抱きしめて、腕の中の正臣に何度も謝った。

正臣はいつもとは違う僕に驚いたのか、ただじっと僕の腕の中で息を詰めていた。

※※※

「綺麗だね。高かっただろう?」

紺色のライターを手のひらの上でコロコロと転がしながら何度も眺め返しながら尋ねた。

「や、安モンだから」

なぜか、さっきからやたらと正臣の態度に落ち着きがない。

「そんなことないだろう?悪かったね、無理させて・・・」

正臣がくれたと思うと、包装紙さえも愛しくて、僕が綺麗にたたもうとすると、

「わ〜!!!」

正臣がガバッとテーブルの上にひれ伏した。
包んであった包装紙を抱きかかえるように・・・・・・

「どうしたの?」

「な、なんでもない。俺、これ捨ててくるから!」

「正臣?」

慌てて、立ち上がった正臣の懐から白くて四角いものが僕の膝の上にはらりと舞い落ちてきた。

Happy barthday

光一朗、誕生日おめでとう。

ライター気に入ってくれたら、嬉しいんだけどな。

正臣

PS:プレゼントは、ライターと俺の2個セット

僕と正臣は同時に言葉をなくす・・・・・・・・・

先に口を開いたのは正臣の方だった。

「……嫌なのか……」

そう言って狼狽える正臣が可愛い。

「……でも良いのかい?プレゼントだなんて言われたら朝まで離さないよ……」  

緩やかな笑みを浮かべた僕はそう言って正臣を引き寄せると、額に軽くキスを落とした。すると正臣の顔はまるで茹で蛸のように赤くなる。  

なんて素直な反応をするのだろう……  

こんな正臣が僕は大好きなのだ。  

「……いいぜ……」  

ああ、きっと夢に違いない。

望み通りの正臣の行動に僕は年甲斐もなく胸を高鳴らせた。

「じゃあ……寝室に行こうか?」  

しなやかな正臣の肢体を抱き上げ、僕は言った。

「……めっ……飯は?」  

クス。これも思った通りだ。

こんなムードの時には必ず恥ずかしいのか、正臣は現実的なことを口にする。
そんな所も、可愛くてとても愛おしいのだけれど・・・・・・ 

だけど、今夜の僕はそれを聞いてやるつもりはなかった。  

「後でね……先にプレゼントを貰うのは礼儀だろう?」  

「でも・・・・」

「駄目だよ。正臣」

「光一朗……」  

自分から言い出した筈なのに、正臣は不安げな表情になる。

「愛しているよ……正臣……」  

逃げ出さないようにゆっくりと僕は正臣の身体に覆い被さり、色付きの良い唇の感触をたのしんだ。

緩やかで甘い時間が流れる。

僕の上をそして正臣の上を。

甘い吐息は何度も僕の名を切なげによび『愛していると』啜り泣いた。

これは本当に現実なのだろうか?それとも僕の見ている妄想なのか・・・・・

僕を現実に引き戻す電話のベルが鳴らないことをただひたすら祈りながら、僕の下で、妖しく喘いでいる愛しい恋人に僕は身体を深く埋めた。

END

お客様各位

なんだか3部作って形になっちゃいましたがこれはこれで終了です〈笑〉

正臣バージョンと、このお話を楽しんで書くことが出来たのも皆、原案を書いてくれたあすかさんのおかげだと思っています〈こんなとこで切っちゃ駄目と怒られましたけど/笑〉

あと、みなさんの総意をくんでくださって、リクをしてくれたMAMAさま、ありがとうございましたvvvこんなので良かったでしょうか(^^;)

15万記念から「恋人シリーズ」の連載も予定していますのでどうぞ今後も宜しくお願いいたしますvv

氷川雪乃