Crystals of snow story on parody

☆.。.:*・・゜Sleeping Beauty☆.。.:*・・゜

むかしむかし、ある国のお城で王様とお后様が、平和に暮らしていました。

やがて、愛し合う二人には、誰もが女の子と見まがうほどかわいい王子様が生まれました。
その王子には、幸せを意味する「ハーティ」と言う名を名付けられました。

王様とおきさき様は、美しく可愛らしい王子の誕生がうれしくてたまりません。
国中の人々を呼んで、盛大なるパーティーを開くことにしたのです。

パーティーに呼ばれた三人の麗しい妖精たちも、ハーティに次々に、すてきな贈り物をささげます。

「ハーティ様が、世界一、綺麗な人になるように」

自分の美しさの元であるフェアリーダストを振りかけたのは、妖精界屈指の美貌の持ち主と詠われている、マカーベ。

「優雅な小鳥のように歌が、上手になりますように」

こちらも妖精界一の美少年とよばれる、スズーヤが鈴の音のごとき歌声をハーティに捧げます。

そして、思慮深い美しさでは妖精界一と言われる沈黙の妖精ミーチが、思慮や知恵の元になる賢者の贈り物をささげようとしたその時、あたりがいきなり暗闇に飲み込まれて行ったのです。

闇の中、恐ろしい声をひびかせ、いかりくるって現れたのは、パーティーに呼ばれなかった魔女ダーマです。

そして、ダーマは不吉な呪いの言葉を言いました。

「ハーティは、16の誕生日が来るまでに死ぬ。
つむぎ車の針に刺されて死ぬのだ。」

そう言い残すと、魔女と先ほどまで城を飲み込んでいた闇は跡形もなく消えてしまいました。

ダーマの呪いは魔女界一。
黒魔法でダーマの右に出るものは誰もいないのです。

言葉を無くしている、王の前で、三人の妖精達も顔を見合わせて困ってしまいました。

「私たちには、魔女の呪いを消してしまう力はありません」

こんな時でも決して取り乱さないマカーベは、栗色の髪を掻き上げながら、王様に言いました。

「でも、軽くすることは出来ます。ただ、ハーティ王子としては16歳まで生きることは出来ません。
そしてつむぎ車の針に刺される運命からも逃げられないのです。
ただし16歳のその日まで王女として暮らすことが出来たのなら、つむぎ車の針で刺されて眠るだけで、死からはまのがれることが出来るのです」

「姫として、育てよとな?あい、わかった。
大事なハーティのためだ致し方有るまい・・・・・
しっかし・・・・16歳のその日から姫は永遠に眠ってしまうのでは意味はないではないか」

王は、泣き崩れているお后をささえながら、悲痛な面もちで、乳母に抱かれて、すやすやと眠っている、美しい赤子に視線を戻した。

「いいえ、それは大丈夫です。ハーティ様はハーティ様を心から愛する、やさしい王子のキスで、目を覚ますでしょう。」

しかし、そうは言われても心配でたまらない王様は妖精たちにたのみました。

「そなたたちだけが頼りじゃ、ハーティを、どこか魔女に見つからない所に隠しておくれ」

王の名を受け妖精たちは、森の奥の自分達の家に姫を連れて行く事にしました。

*:.。.☆.。.:*

何年もが過ぎて、ハーティ姫はそれはそれはきれいな娘になり、誰よりも上手に唄うようになりました。
ただ、ダーマの出現によって、本来ならミーチから受け取るはずの、賢者の贈り物を受け取ることが出来なかったハーティはちょっとばかり思慮の足りないおっちょこちょいなお姫様に育ってしまったのです。

毎日の森でのくらしは、とても楽しいのですが自慢の歌を聴かせてあげるのは、いつも森の動物たちばかり。

一緒に暮らしている3人の妖精たちにはそれぞれに、想い人がいて、時間が有るとどこかに雲隠れしてしまうので、ひとりぼっちになってしまうハーティは、時々、さみしい気持ちにもなります。
そんな、寂しい気持ちをまぎわらせてくれるのが、時折王様の命を受けてハーティの様子を見に来る従者、ブレンダの存在でした。
ブレンダは、ハーティに森の外の色々な話を聴かせてくれるので、ハーティは彼を兄のように慕っていたのです。

妖精たちも、ハーティに尽くすブレンダのことを可愛がり、姫を守るためにと、妖精の盾と剣を与えたのです。

そんなある日、銀髪の美しい王子さまが、馬に乗って森を通りかかりました。
王子様は、ハーティ姫のすてきな歌声に誘われて足を止めました。
ハーティ姫も、初めて見る美しい王子様との出会いに心がはずみました。

この、クーネス王子は、ハーティの身体が溶けるほどの甘言をハーティ囁き、アイスブルーの瞳でじっと見つめてはギュッと手を握るのですから、森の中で育った、世間知らずのハーティはたちまち、ぼーーっとなってしまったのです。

二人はたちまちお互いを好きになってしまいました。
ハーティ姫は、王子様の事を忘れることができません。

実際は王子のことが忘れられないのではなくて、宝物のように優しく、壊れ物のように大事にしてくれる、王子の態度が忘れられないだけなのですが、ちょっと考えの足らないハーティには、賛美されることによる胸の高鳴りと本当の恋との違いが分からないのです。

そんな、ハーティの様子を見てしまったブレンダは気が気ではありません。
それでなくても、ここには妖精界きっての美丈夫が3人もいて、ハーティになんだかんだと世話を焼いているのですから。

そしてハーティ姫は、運命の日、16の誕生日をむかえました。

妖精たちが、ハーティの為にささやかなパーティーをひらいてくれました。
大きな誕生日ケーキと、新しい素敵なバラ色のドレスを作ってくれました。

ハーティ姫は、とてもよろこびました。
ミーチが作ってくれた、バラ色のドレスを着てくるくると踊ってみせ、スズーヤと一緒に、綺麗な声で喜びを歌うのです。

しかし、みんなの心の中は本当は、さびしさでいっぱいなのです。
パーティーが終わると、王様との約束でハーティ姫は、お城へ戻らなくてはいけないのですから。

ブレンダが向かえに来るとハーティ姫と妖精たちは、お城にむかいました。

お別れの悲しさでいっぱいの妖精たちは、魔女ダーマの化けたカラスの姿に、気がつきませんでした。

魔女はにやりと笑い、「やっと、呪いをかける時がきた」とつぶやいて笑います。

魔女は、くるりとハーティたちの頭上を旋回すると、先回りして、お城に向かいました。
お城の塔の一番上にある部屋にしのびこんでハーティ姫を待つ事にしたのです。
お城についたハーティ姫は、低くあやしい声を聞きました。

「さぁ、塔にのぼれ、塔にのぼれ、のぼれ・・・」

魔女ダーマがハーティに魔法をかけているのです。
ハーティ姫は、その声にあやつられて、そっとみんなから離れると塔へと続く階段を上りました。

「かわいいこ、さあ、ドアをあけて、早くおはいり、おはいり、さあ早く」

「ふふふ、よくきたね。さあ、つむぎ車の針に触れてごらん。さあさわるんだ」

魔女の言葉に誘われるように、ハーティは、つむぎ針に手を伸ばしてしまいました。

チクッ☆.。.:*・・゜


ほんの少しさしただけなのに、ハーティは、ばったりと倒れてしまいました。

「うふふふふ、私の呪いから逃げられる者はどこにもいないんだよ。」

魔女は、笑いながら逃げて行きました。

お城じゅうを探していた妖精たちとブレンダが、ようやく、倒れているハーティ姫を見つけました。

「魔女にやられたんだ」

マカーベが、悔しそうに呟き、ハーティを抱き上げますが、ハーティはだらりと腕を延ばし、まるで死んでいるみたいです。

「かわいそうに・・・」

スズーヤは涙を浮かべて、くやしがります。
悲痛な眼差しで、ミーチは愛し子の頬を何度も撫でてやりました。

少し離れたところでは、ブレンダがただただ放心状態で立っていました。

妖精たちは、ハーティ姫を きれいなベッドに寝かせました。

命までなくしてしまったのではないかと危惧していただけに、頬の愛らしいピンク色と花びらのような唇から漏れる微かな吐息を確認すると、

「よかった、ハーティは、眠っているだけだ」

「お祈りが、やくにたったんだね」

妖精たちは、胸をなで下ろしました。

眠っていても、ハーティ姫は、誰もがうっとりするほど綺麗でした。

マカーベは部屋の隅で、じっとハーティの姿を見つめているブレンダの元に歩いていきました。

「ブレンダ?」

「あ、はい?なんですか、マカーベ?」

「僕たちの祈りが届いているのなら、ハーティは誰よりもハーティを愛する王子の口づけで目覚めることが出来るはずなんだ。誰よりもハーティを愛しているのは君だろう?違うかい?」

「わたしは・・・・・・王子では有りませんよ、マカーベ・・・ただの・・・従者にすぎません。それに・・姫はクーネス王子に恋をしてるでは有りませんか!」

大きな声で否定したブレンダに、スズーヤとミーチも振り返る。

「何言ってるの?ブレンダ。憧れと恋の違いなんか今のハーティにはまだ分かってないだけなんだよ。ほんとは誰が好きなのか僕たちはちゃんと知ってるんだから」

「わたしは・・・・・ただの従者です・・・・姫に恋などしてはいけない・・・」

苦渋に満ちた顔を上げた、ブレンダは、

「クーネス様を捜してきます!私の命に替えても、姫をこのままになど決してさせません!」

カッと床を蹴って、急ぎ足で部屋から出てきました。

ブレンダから、知らせを受けたクーネス王子様は、馬に飛び乗って、ブレンダとともにお城に向かおうとしました。
しかし、魔女が「行かせてたまるか」とつえを振ると棘だらけのイバラが王子たちを囲みます。

王子の前に立ち、ブレンダは勇敢にも生き物のように襲いかかってくるイバラを切り倒して進みます。

魔女は、竜に姿を変えて、「焼き殺してやる」とブレンダたちに襲いかかりました。

「おまえになぞ、大切な姫を好きにさせたりしない!!」

ブレンダは、妖精にもらった盾とつるぎでダーマの化けた竜と戦います。
どんなに火をふいても、この盾は燃やす事ができません。

激しい戦いが続きましたが、やがてブレンダが魔女を倒すことが出来ました。
ブレンダが竜を倒すのを見届けるとそれまで、後ろに隠れていたクーネスがお城にかけつけ、さけびました。

「ハーティ姫は、どこにいる!!」

けれども、だれもこたえません。
ダーマがいばらに閉じこめたときに、お城にいる人達は、みんな眠ってしまったのです。

クーネス王子と後から駆け足でやってきたブレンダは姫の眠る塔の上にある部屋にたどりつきました。

「なんて綺麗なんだろう」

微笑みをたたえて眠るハーティを見た王子は、ぐっと唇を噛みしめているブレンダなど気にも留めずに、姫の傍らにそっとひざまずいて柔らかなバラ色の唇にキスを落としました。

しかし、いっこうに姫は目覚めません。

「どういうことだ?姫は私の口づけで目覚めるはずじゃなかったのか?」

怒りをあらわにした、クーネス王子はこうなったら、力ずくでも起こしてやるとばかりに、もう一度激しく口づけながら、荒々しく、姫の身体をなで回し出しました。

「お止め下さい!王子!!!」

「な、ななななんなんだ!これは?!」

慌てたブレンダが、王子の肩を掴んだのと、無礼にも姫のスカートを捲り上げ中に突っ込んだクーネスの手が止まったのはほとんど同時でした。

びっくりして抜き出した自分の手が先ほど感じた“アノ”感触と姫の美しい寝顔を信じられない面もちで交互に眺めているクーネスを脇に押しやって、

「姫は本当は王子なんですよ。魔女の呪いを避けるために姫になりすましていたんです」

と言い放ったブレンダは、愛していますとささやきかけながら、姫の唇に己の唇を押し当てました。

押しやられたクーネス王子はと言うと、いくら綺麗だからって、男なんかまっぴらだとぷんすか怒りながら帰っていってしまいました。

ブレンダの愛が通じたのか、ハーティは二、三度、長い睫毛を瞬いて目をさまし、ブレンダの姿をその美しい紫色の瞳に映すと、にっこりと微笑みながら言いました。

「僕、今ね、ブレンダの夢を見てたんだよ」

ブレンダも、にっこりとして言いました。

「わたしはいつもあなたの夢だけを見てるんですよ」


エピローグ


妖精からハーティを救ったのはブレンダだと訊いた王様はそれは喜んで、ブレンダに伯爵のくらいを与え、ハーティとブレンダは末永く幸せに暮らしましたとさ。

〈THE END〉

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