******インドアの勧め ******

 

10HIT記念
【アウトドアの勧め】番外編

 

あ・・・・・相澤・・・」

「ここがいいの?」

「ふっ・・・・・・ん・・・あっッダメ・・そこ・・・」

相澤の、力強い腕が俺の身体を這い回って、敏感な所を探り当てる。

「ふふ・・・右の方がいい?」

「あ・・・・や・・・・・んっっくぅ・・・・・・」

「気持ちいいの?」

「き・・・・きもちい・・いい・・・ふ・・・あ」

うつぶせにベッドの上に寝かされた俺の上に相澤の身体がずっしりと重い。

「だめだよ、よっちゃん。もっと、身体の力を抜いて・・・・・・」

「い、痛い!相澤、そこはダメ、い、痛いよ・・」

突然襲った痛さに、涙が目尻に浮かんだ。それなのに相澤の長い指は容赦なくポイントを責め立てる。

「や・・・・・だッ」

「最初だけだから、我慢するんだ・・・・あとで、すごく気持ちよくして上げるから」

「い、いたぁい!やっ!相澤!!」

ぐいっと、そこを捻り込まれて、俺は情けないほどの悲鳴を上げながら足をバタつかせた。

「こら、暴れないの。イイコにしてなさい」

俺の耳元で、相澤は薄く笑いながら、優しくささやいた。
そうするとさっきまでの痛みが嘘のように暖かな快感に様変わりして身体全体にゆっくりと拡がっていく。

「は・・・ん・・・・」

「ほら、気持ちよくなってきただろう?」

「う〜ん、気持ちいい・・・もっと、して、相澤・・・」

「ああ、いいよ。普段、よっちゃんは筋肉使ってないから、よくほぐしておかないとな」

スポーツマンの相澤は、筋肉をほぐすマッサージの心得もあるらしく、キャンプで疲れ切った俺の身体を、部屋に入るなり、丁寧に揉みほぐしてくれているんだ。

駅から近いという理由で、俺はなんだかうまく丸め込まれて、相澤の家にいる。

ハッキリ言って、今家に帰ったら、にやにや顔で待ち受けているだろう兄貴や、悪友どもに拉致されるのは目に見えてるし、絶対になんだかんだとからかうあいつらを俺も相澤も何もなかったように平然とした顔でかわし切ることなんか出来そうにないから、まぁ、ここに来るのもそうイヤじゃなかった。

なんにしろ、俺はちゃんとした部屋の中の柔らかなソファーとかベッドの上にゴロンと寝ころびたかったんだ。

相澤は両親と妹が確か一緒に暮らしてるはずだけど、俺たちが帰ってきたときには誰もいなかった。

だから、俺は相澤の勧めるままに、お風呂まで借りてさっぱりと汗を流し〈怪我にはちゃんと相澤が手当をしてくれて、プロテクターフィルムとかいう水に濡れても大丈夫なやつをを貼ってくれた〉少しだぼだぼだけど清潔な相澤のTシャツとハーフパンツを借りて、マッサージまでして貰ってると言う王様気分を味わっていた。

初めて上がった、相澤の部屋は、相澤らしくこざっぱりというか、悪く言えば殺風景で・・・今寝ころんでいるベットと机、あとは大きな本棚があるだけで、なんだかガランとしていた。

壁にはポスター一枚貼ってないし、本棚には漫画の本もない・・・・・・あ、でもあれ、漫画かな?「火の鳥」って確か・・・・漫画だったよな?

俺は、相澤の匂いのする柔らかなベッドにうつぶせに横たわったまま、気持ちいいマッサージに身を委ねて、ぼんやりと部屋にあるものを眺めていた。

むかしっから知ってるし、あんな事までしたのに、俺・・・・・相澤のことまだなんにも知らないのかもしんないなぁ・・・・・・・

二枚目で、スポーツマンで、頭が良くて・・・そんな誰もが知ってることしか知らない。

相澤の好物が何とか、どんな音楽を聴くんだとか、スポーツ以外にどんな趣味があるのかとか・・・・なんにも知らないんだ。

これから、色々知りたいな・・・・・

相澤の好きな食べ物、好きなテレビ、好きな音楽。

好きな子のタイプも・・・・・・・

夢見心地で気持ちよく意識を漂わせてた俺は、まるで初恋をした少女みたいに、がらにもなく可愛らしいことを考えたりしていた。

山から持ってきた、ピンクの綿埃が、この部屋の中にも降り積もっているような、そんな優しくて、幸せなひとときだった。

「よっちゃん、ちょっと腕上げてごらん、二の腕も、ほぐして上げるから」

「ああ、うん」

白昼夢から引きずり出された割には、珍しく、俺は素直に頷いて、身体の下にしていた腕を横に伸ばした。
少し横に身体を向けて、右腕を相澤の方に延ばすために左手がマットの端を掴む。

あれ・・・・

柔らかなマットとシーツの間になんだか、異質な手触りが・・・・・・

俺はそれを、スッと、引っぱり出してみた。

「よ・・・・・・・よっちゃん!!」

相澤が、驚いたような声を出す。出てきたのは包装紙でカバーの掛けられた薄い冊子。

「なんだよ、相澤、こんなとこにエロ雑誌かくしてんの?中坊みてぇ」

怪訝そうに眉を寄せて、上半身をむっくりと起きあがらせた俺の腕から、真っ赤になった相澤が、あたふたと雑誌を取り上げる。

「なんだよ、いいじゃんかエロ本ぐらい見たって」

そーだよな、相澤だって聖人君子ってわけじゃないもんな。まあ許してやるか。

「相澤って、どんなの見るんだよ?顔に似合わず結構すごいのが好きだったりして。ねぇ、俺にも見せてよ。」

「こ、これはダメだ・・・・」

からかってやると、ますます相澤は真っ赤になって、その雑誌をギュッと両腕で握り絞めた。

「真っ赤になることないじゃん、それ、相澤のおかずなんだろ?」

笑いながら言った言葉に、相澤は言葉をなくし、目の前にある端正な顔からすーーーと血の気が引き俯いてしまった。まさに赤くなったり蒼くなったりっていうやつだ。

「なんだよ・・・・・・そんなに、びっくりすることないじゃん。俺別に相澤がエロ本もってても、おかしいなんて思わないぜ」

だって、兄貴なんか、エロビデオを俺に「みてみろよ、すげーぜ、これ!」とか言って、見せようとするもんな。
雑誌の一冊や二冊か大したことないじゃん?

でもなんだよ、その異常な反応は?

なんだか、あまりにも、派手な相澤の反応に俺の方が不安になる。

エロ本→おかず→健全な青少年だろ???

俺にそんなこと言われるのが恥ずかしいのかな?でも、女の子じゃあるまいし、まして相澤は俺と違って、ああいうこと、なれてるみたいだったし。

あ・・・・・・・・もしかして・・・・変な奴なのか?

まさか・・・・

SMとか・・・・・

ロリコンとか、デブ専とかいう「まにあっく」な趣味なのか?

俺、相澤のこと知りたいってさっき思ったけど・・・・・・そんなのはイヤだな。縛らせてくれとか、ろうそくたらたらがしたいなんて言われたら・・・・

や、やだぞ・・・俺。ブルブルっ・・・・

ち、違うよな・・・・・あ、そうか!ああ・・・なんだホモ雑誌かも・・・・、ああきっとそうだ。

「なぁ、ホモ雑誌だって・・・仕方ないじゃん。だって、相澤俺のこと好きなんだろ?だったら・・・そんなのも見てみたくなるよな。気にすんなって」

俺は一番ありそうなところで、手を打って、まだ消沈している相澤の肩を気安くポン♪と叩いてやった。

「・・・・」

相澤は、なにか言いたげに、ゆっくりと顔を上げた。

「いいって・・・・気にしてないからさ」

俺はいくら相澤が好きだからって言ったて・・・野郎の裸の載った雑誌なんか見なくないけど・・・・・・まぁ、目くじらたてることじゃないしさ・・・

「ホモ雑誌なんかじゃないよ」

ふっと、息を吐きながら、相澤は身体の強ばりを解いた。

手元からゆっくりと雑誌が落ちて、はらりとカバーがめくれる。

地味な、薄水色の小冊子・・・・・・・・・・表紙には見たことのある、三菱に【貴】マーク。

こ、これって・・・・・・・・

「なんで・・・・こんなもん、相澤がもってんだよ!!!」

しばしの絶句のあと、俺はびっくりして叫んだ。

「いとこに譲って貰ったんだ・・・・・・よっちゃんが載ってるから」

それは去年の暮れに配られた、俺の学校の入学案内書。
去年の秋、俺は校長室に呼び出されて、この本のモデルにさせられたんだ。
一ページめの見開き、一番目立つ場所に、時代物の校舎本館をバックにさわやかに【げろっ・・・】微笑んでいる俺が超どアップで載ってるんだ。

ほかにも制服の、夏冬、の説明とかのPにも全身写真がこれでもかと写っている。それもみんな営業用のスマイルでさ。

だって、しかたないじゃん。これをOKしたら、物理の赤点見逃してやるなんてあくどいことを言うんだからさ。

ホントに、あれでも教育者かね・・・・・・

「ごめん・・・・・」

事の繋がりが理解できなくて、しばし、ぼーーとしてた俺の前に、相澤がいきなりガバッと頭を深く下げた。

「へ・・・・・?」

なんであやまるんだよ、これって入学案内書だぜ・・・エロ本でもなんでもないじゃんか。

俺の脳内シナプスがあっちこっちと伝達しながらこんがらがった話を何とか繋げようとする。

相澤には必要ない高校の案内→笑顔の俺の写真→エロ本みたいに隠してた→赤くなって謝ってる→まさか・・・まさか・・・・・・お、おかずぅう?!?!

「はは・・・・やだな、相澤、気にすんなよ・・・・・・・
なんて、言うわけないだろ!!!お前って奴は、お前ってやつは!!!!こんなもん、おかずにするなぁ−−−−−−−−−−−−!!!!」

俺の僅かな理性は遙か彼方にぶっとんじまうほど、恥ずかしい思いをした。

俺はポカポカ相澤を殴って、殴って、疲れ果てて、そのまま、いつの間にか、ごめんごめんと謝る相澤に抱き込まれてしまっていた。

「俺もう、お前なんかきらいだかんな!!」

「悪かったよ、もうしないから」

「当たり前だろ!!あんなもんおかずにするなんて世の中広しといえど、おまえぐらいだっ!!!」

ぷんぷん怒ってる俺に、

「でも、あの写真のよっちゃん、すごくかわいいからさ」

「かわいいから、なんだよ!」

「俺・・・・・ガキみたいに、我慢できなくなる・・・・」

ふっと、真面目な色が相澤の瞳によぎった。

おい、急にそんな顔すんの反則!

「だ!だからって・・・・あんなモンで、そ、そんなこ・・・・・・・ん。。んくぅ・・」

反論は暖かな口づけに溶かされて、何が言いたいのか分からなくなった。

「もう・・・しない・・・約束する・・・・」

甘いささやきが、俺の五感をこれでもかと刺激し、さっきのマッサージと同じ指が、同じからだに触れられているのに、全く別の快感が身体に拡がり、ぞわりとはい上がってくる戦慄に全身が粟だった。

「あんなもん、見なくていいから・・・・・俺を・・・本物の俺を・・・・相澤・・・見てよ」

上がり始めた息で俺は呟きながら相澤の首にギュッと抱きついた。
おかずにされたことはなんだか納得いかないけど、本当に前から相澤が俺を好きだったんだって思うと、身体が堪らないほど火照り始める。

「綺麗だよ、よっちゃん。だから、もうダミーなんかいらない」

柔らかなベッドの上で、ゆっくりと服を剥がされながら・・・・・これから俺、おかずじゃなくて、主食になってたべれらるのかなぁ・・・なんてばかばかしいことを一瞬思ったんだけど、熱くて激しい口づけにつまらない考えをゆっくりと放棄した。

〈END〉

へへ、企画ものと言うことで、これと言ったお話はないんですけど。遊び心で書いてみました。

「おかず」の意味が分からない乙女はそのまま乙女のままでいましょうねv