Crystals of snow story on parody

The day after

お子ちゃま行進曲

あの日から約一月・・・・・・

ラットでの臨床実験しか記録が無いのだから、これはこれで不謹慎にも澪の研究意欲を大いに駆り立てる事件であり、澪は常に雅之をそばに置き、子細な記録を取っていた。

「せ、先生!!!!な、何をなさってるんです!!!!」

研究室奥にある澪の控え室の扉を鼻歌混じりに開いた児玉がまたしても真っ赤に激昂しながら真っ黄色の叫び声を上げた。

児玉が目にしたのは長机の上にまな板の鯉状態で、全裸で横たわっている雅之と、その上から覆い被さるように覗き込みクリップボードに何やら子細を書き込んでいる澪の姿であった。

「あ、児玉のお兄さん。おはようございます」

雅之は首だけを児玉に向けて、天使の笑顔を向けた。雅之の推定年齢はただいま8歳と10ヶ月と言ったところだろうか。

「なんだ、偉く早いな、児玉」

無造作に額にかかっていた髪を掻き上げると、澪の氷の美貌を引き立てる、サファイヤのピアスがブラインドから差し込んでいる朝日にキラリと光った。

「早いなじゃ無いですよ!!!!なに朝っぱらからいかがわしいことしてるんですか先生!!!子供の間はなにもしないって約束したじゃないですかぁ〜!」

叫びながら、自分の白衣を脱いだ児玉は急いで雅之の華奢な裸体を包み込んで抱きしめた。

「大丈夫?先生に変なことされなかった?」

児玉の問いかけに、雅之はキョトンとつぶらな瞳を見開いている。

「はぁ〜〜・・・・・よ、よかった・・・・」

安堵したのか、児玉はぐすんと鼻を鳴らした。

「児玉のお兄さんどうしたの?ねぇ、泣いちゃダメだよ・・・・澪先生、どうして児玉のお兄さん泣いてるの?」

「さあな?もう、今朝の記録はすんだから、服を着てもいいぞ」

「うん。お兄さん、僕ロッカールームで着替えてくるから、もう、泣いちゃダメだよ」

殿中でござるの如く白衣をズルズルと引きずりながら、雅之はそのまた奥のロッカールームへと消えた。

「で、俺がいついかがわしいことをしたって?」

しゃがみ込んでいた児玉の手首を掴み、グイッと引っ張り寄せると澪は意味深な笑顔を浮かべた。

「だ、だって・・・」

抱き寄せられたような格好になり、児玉はまたしても真っ赤になっている。

「第一俺は、子供の間はなにもしないなんて約束ははなからしていない。

それとも、この永い禁欲生活の間だ、お前が慰めてくれるのか?ん?」

「ふ、不謹慎です!先生」

「なにが?子供の雅之に手を出すことか?それともお前に手を出すこと?」

茹で蛸状態の児玉のその顔よりも赤い唇に澪の唇がそっと・・・・・・

「わぁ〜!!!先生!!!ま、雅之君がぁ〜」

「今の南には見られたってかまわんさ・・・・

み、みなみ・・・・?」

きちんと服を着てロッカールームから出てきた雅之は、抱き合っている二人を目撃して、完璧に固まってしまっている。

「みなみ?」

もう一度、零が声を掛けると、真っ黒な瞳から大粒の涙がボロボロ零れだした。

「なっ!!!いったいなんだってんだ?ああ、よしよし、どこか痛いのか?」

澪の問いかけにしゃくり上げながら、雅之は自分の胸を押さえた。

「む、胸か???大丈夫か?」

慌てて、雅之の傍に跪いた澪は左手で抱き寄せて、右手で胸の辺りをさすってやる。

「ロッカールームで撲ったのか?」

「ち、ち・・・がう・・・・・れ、澪先生、や、やだ・・・・・ぼ、僕以外の人にキ、キスしちゃ・・・・やだ・・・」

「せ、先生!やっぱりそんなことしてるんじゃないですか!!」

「バ、バカ!お休みのキスをするだけだ!」

いつもは冷静な澪がやけに狼狽えて答えた。

「や、やだもん・・・・・・僕・・・・ヤダ・・・」

「よしよし、さっきのはちょっとした冗談だからな、俺がキスするのは南だけだ、それでいいな」

澪は雅之に言い含めるように言ったが、かなり信憑性に欠ける言葉ではある・・・・しかし、そこは素直な雅之のことパッと花の(かんばせ)を輝かした。

「ほんとう?」

「ああ、本当だ」

白衣をしっかりと握りしめて泣きじゃくる雅之を抱き上げて澪はそのふっくらとした唇にそっと口づけた。誰にも見せたことの無いほど優しそうな表情で。

「澪先生、大好き!」

澪の首根っこにギュッと雅之は腕を廻した。

「ああ、俺もだ・・・・・

しかし・・・・・幾ら俺が美少年好きだとはいえ、ショタの趣味は無いんでな・・・・・・せめて後五歳は早く育ってくれ・・・・」

雅之に言うでもなく、澪はボソっと本音を吐いた。

30近い、美貌の男が高々10歳にも満たない子供を抱きかかえてデレデレとやにさがっているさまに、さすがの児玉も辟易とし、二人を部屋に残してでていくことにした。

「愛してる・・・お前だけだからな・・・・」

と、甘く囁く澪の声をスチールのドアがパタンと閉ざし、二人の世界を封じ込めた。

〈END

 

パロではないかもですが・・・・・・以前から何度もその後をと所望されていたので、ちょこっと書いてみました。

しか〜し、みなさんが読みたい部分とはかなり違うと思います。。。。

みなさんが望まれてるのは「源氏物語」で言うなら3日餅の辺りのことでしょう〈笑〉分かっていながら書かない氷川は何とも意地悪な奴です〈笑〉