鰯雲、ぷか、ぷか

タイトル命名:雪乃さま(笑)

Crystals of snowさま、20万Hitsお祝い【その2】





「有名人ですから。お二人とも」

 半分嫉妬混じりで嫌みっぽく言ったのに、花のように綺麗なこの人はサラッと流してしまう。

「そうなんだ」

 そして、クスッと笑みを漏らす口元に、目の前の男前はジッと見入る。

 それは恋人なら当然かも知れないけれど、なぜだかさっちまでが目を釘付けにされているようで…。

 ま、気持ちもわかるけど…。
 だって、ほんっっとに綺麗だもんな。
 でも、俺の好みじゃないや。

 
「ともかく、本当にごめんね。痛いところとかでてきたら、必ず連絡してね」

 東森研二は俺の大事なさっちの頭を撫でながら、まるで小さい子に言うような口調でそう言った。
 うー!触るなっ!
 俺はさっちの身体を引っ張って、背後に隠す。

「電車、来ますよ」
 俺がぶっきらぼうに言うと、どこから見てもお似合いの二人は、顔を見合わせて声をあげた。

「じゃあ、悪いけど、お先に」

 ニコッと笑って踵を返し、二人は駅へと駆けていく。

 駆けていく様子からすると、あれは喧嘩でもしたんだな。
 逃げる美人を男前が追いかけていた途中にさっちにぶつかったんだ。きっと。

 くっそう。どうでもいいから俺のさっちに近寄らないでくれ。
 まったく、この余計な接近遭遇でさっちの『東森熱』があがったらどうしてくれるんだよっ。

 お似合いなんだから、二人だけの世界にいろってんだ。

 俺はむかむかにむかついて、去っていく二人の背中を睨み付けていた。

 すると…。

「たっくん…何見てるの…?」

 背後から小さく掛かった声が震えていた。

「…何でもない」

 やっぱり、『熱』あがっちまったか?さっち…。
 その『熱』俺が下げてやりたいよ…。 

「行くぞ、さっち」

 俺はさっちの腕を乱暴につかんで、自分の気持ちをもみ消すように早足で歩き出す。

 その時さらっと通り過ぎた風に、さっちの白いシャツが揺れて…。
 あの美人が残した香りが立ち上った。

 俺はあの男前の匂いまでついてるんじゃないだろうなと不安になって、思わずさっちの身体に顔を近づけた。
 その時見せた、さっちの表情は、困惑と不安に満ちていて・・・。

 その時俺の脳裏に、悪魔のごとき考えが浮かんだきた・・・。
 


☆.。.:*・゜

 

 学校からの帰り道。朝から引き続き秋晴れの爽やかな空は、朱色の夕日が占領し始めている。

「な、さっち・・・。お、乙羽さんって綺麗だよな・・・」

 俺、声震えてないだろうな・・・。
 なにしろ慣れない言葉を喋るってのは、疲れる・・・。

「あ、うん・・・そう、だね・・・」

 さっちの返事もたどたどしい。

「あ、あんな恋人いたら、う、嬉しい、だろう、な」

「そ、そりゃあ、そうだ、よね」

 そう、今朝、俺の脳裏に突然浮上してきたのは『さっちに嫉妬をさせよう大作戦』だ。

 今までさっちにベッタリだった俺が、心をよそへ泳がせたら、さっちはどうするか・・・?

 はっきり言って危険な賭だ。
 何しろさっちの心はあの男前が占めている。
 だからヘタをすると『たっくん、お互いにがんばろうね!』なんてことにもなりかねない。
 
 それは困る。
 困るんだけど、俺は追いつめられていた。
 だからやるっきゃない。
 さっちがこっちを向いてくれますように。
 それだけを願って・・・。

 けれど、訪れた気まずい沈黙に、いきなり俺の決意は萎えそうになる・・・。

 突然、

『さっちが好きだーーーーーーーーーーー!』

 と、叫びたい衝動に駆られて、見上げた空には鰯雲。



「た、たっくん・・・。たっくんは、もしか、して・・・あの人の・・・こ、と・・・」

 俺のささくれた心とは正反対、あまりにものどかな秋の空に、さっちが掛けてきた声もなんだかふんわりと通り過ぎていく。

 ぷかぷかうかんだ鰯雲は、夕日に焼かれて、なんだか美味そうで・・・。

「食っちまいたい・・・」

「・・・・・・・・・・え・・・・・・・・・・・・っ?!」

 
 ん? 
 なんで、さっちが絶句してるんだ?・・・。



END
(続く、とも言う/大汗)


さぁ、皆さん一緒に叫びましょう〈笑〉

もう、何も他に言うことはないです。

言うべきことは一つだけ♪

ももさん、つづき・・・プリーズ〈沢山の人の手のひらが見えるはず/笑〉

「たっくん&さっち」には今回も企画にとっても、花を添えていただきました。これからも宜しくね。

 

【桃の国】さまはこちら・・・・