AI makoto運命★2001
櫻の園 another story


櫻綾(おうりょう)学院は、幼稚舎からエスカレーター式で上がってくる生徒が大半の由緒正しき学院だ。ここに中等部や高等部から編入するのはかなりの難関らしい。だがオレは、小学6年の時引越して来た家がこの学校に歩いて3分だったから、中学からは絶対ここに入ってやると決めてしまっていた。そして一度決めたことはくつがえさないのがオレ、花輪 舞琴(まこと)の人生のポリシーなのだ。

試験は難しかったが、キアイ一発、オレは合格した。父さん母さんはとても喜んで、合格発表の日はお赤飯にエビフライという豪華版だったし、高校生の姉ちゃんは「弟があの学校に入るなんて夢のようv」と、目を潤ませて遠いところを見てはしゃいでいた。姉ちゃんは『ジュネ』ものとかいうのが好きで、学校で『ドウジン』というのをやっているらしい。こうゆうオンナは男子校がとても好きらしいんだ。よくわかんねえけど。
ま、そういうわけでオレは晴れて、名門校の学生になった。そしてそこで、運命の出会いがオレを待っていたんだ。

「遅いよ舞琴」
入学式。オレは編入生仲間の考太郎と門のところで待ち合わせをしていた。考太郎とオレは試験のとき席が隣だったんだが、そんときいきなりすごく気が合って、絶対一緒に受かろうなってその場で電話番号を交わしあった仲だ。
可愛い奴だぜ、考太郎。試験の時、なんかめちゃくちゃ緊張してたみたいで、真っ青になって鉛筆構えて震えてるもんだから、オレ思わず大丈夫かって声かけたんだよ。そしたら考太郎、ぎくっとしてオレの方を見るのな。どっか具合悪いのかって聞いたら、
「違うんだ。ただ、・・・僕この学校に絶対受かりたくて、それで、・・・っ、」
とかなんとか涙目でいうもんだから、オレ言ってやったんだよ。
「おう!オレもだぜ!そんじゃこうしよう。オレとお前はここに受かって、そんでオレらクラスメートになる!そう決めとこうな!」
考太郎はきょとんとする。オレはばちんとウィンク(両目しかできねえんだよオレのウィンクは。だから
ちんじゃなくてちんになるのな)して、さらにこう言ったんだ。
「オレはな、いったんこうと決めたら、なにがなんでもくつがえさないってのがポリシーなんだ。だからお前は絶対オレのクラスメートになるんだから、オレら頑張ろうな?」
すると考太郎はこれ以上ないってくらいのぱあっと晴れやかな笑顔でありがとうって。
へへ、なんかめちゃめちゃ可愛かったんだぜ。

「えっと、伊本くんもここに来るはずなんだけど」
考太郎はそう言いながら、腕時計を確認している。
「誰だっけそれ」
オレがいうと、考太郎は肩を竦めて
「ほら、やっぱり試験のときに知り合いになっただろう」
そんなやつもいたっけか?オレは首を傾げながら学内を見回す。しっかし、ここってまあ、すっげえ桜だよな。なんか学内全てピンクのもやがかっててる感じで、ヘンに浮かれ気分になりそう・・・

そしてオレは、見たんだ。
校庭の隅にひとり佇んでいる、奴を。

桜の木の下に、そいつは佇んでいた。
けぶるような薄桃色のもやの中。
ほっそりした小柄な体。そして俯き加減の白い小さな横顔は、研ぎ澄まされた刃物みたいな、張り詰めた感じのする整い方してて。なんというか今まで見たこと無いくらい・・・キレイな奴だ。
甘いピンクの背景をしょっているのに、そいつはとてもクールな感じでそっから浮いていて、そんで、・・・なんでかしんねえけど思いきり胸に、・・・ずしんとくる。

「・・・コータロー。悪いんだけど先に行っててよ」
オレがそう言うと、考太郎はぎょっとしてオレに振りかえる。
「え、なに。舞琴、どうしたの一体」
「わりい、オレ、・・・たった今、なんだけどさ、・・・たぶん、・・・運命のひとに出会っちまった」
「はぁ?なんなのそれ。え、あ、舞琴ったら!」
「とにかくオレ、行ってくるから!」

オレの名前を呼んでいる考太郎の声を背中に感じながら、オレは胸の中でこう返した。
止めてくれるなコータロー。オトコはやっぱり、キメなちゃならない時ってあんだよ。
オレは走った。全速力で。走りに走って、そして奴のところについた時、奴は物凄い勢いで走ってくるオレに気付いて少しだけ驚いたような顔をしていた。
「お前っ!!」
オレはそう声をかけて、しかし息が苦しくてはぁはぁしてしまって、その後の言葉が続かなかった。
「・・・お前って、もしかオレのこと?」
そいつはそういうと、オレの目の前に立ちはだかった。そしてそうされて、オレはやっとそのことに気がついたんだが。
なんと、そいつはオレよかずっと背が高かった・・・・!!

小柄そうに見えたのは、体つきのバランスがいいのと顔が小さいせいで、並んでみると、なんとそいつはオレよか頭ひとつもデカかった。そんでもやっぱ、間近で見るとサイコーにキレイで、オレは思わずごくんと唾を飲みこんでしまう。
真っ黒でつやつやした髪の毛を無造作にばさばさと手で掻くと、奴は冷めた調子でオレに言う。
「そんで、一体何の用」
用と改めていわれても、何の用もないんだけどさ。オレはしかし、勢い込んで奴に尋ねる。
「オレ、花輪 舞琴って言うんだけどっ、お前名前なんていうの?」
「・・・は。いきなり、・・・なんでお前に名乗らなくちゃなんねえの」
小馬鹿にしたような感じでそういうと、奴はふっと笑う。冷たい感じの微笑みだけど、・・・・すっげえキレイ。
「お前の名前を知りたい。お願い教えて」
「知ってどうすんの」
冷たい言葉を吐きかけるその唇が赤くて、白い肌に合っててなんか、・・・ヤらしいくらいたまらんキレイ。

「お互いの名前を知らないと、仲良くなれねえじゃん!オレ、お前と仲良くなりたい」
オレがそう言うやいなや、奴は笑い崩れた。腹を抱えて笑い出したんだ。
え、・・・オレ、なんかそんなまでおかしいこといったっけ・・・。
「仲良くって、・・・はは、オレと仲良くって、・・・」
息を切らして笑いながら、奴は目尻を拭う。

その時、遠くから声がした。
「おおい、あい〜!式が始まるぞ!!」
声の方を見ると、誰かがこちらに向かって手を振っている。そいつに軽く手を振り返すと、奴はオレの頭をぽんと叩いて、そして笑った。
さっきまでと全然違う、柔らかい笑顔。
直撃弾。破壊力殺傷力最大級の笑顔。
「入学式出るんだろう?ぴよぴよ新入生。オレの名前は、そこでちゃんと聞いとけ」
そう言い残すと奴は身を翻して、すたすたと歩いていってしまった。

桜色のもやの中、奴の背中が遠ざかっていくのをオレはただ呆然と眺めていた。
オレの頭ん中は、さっきの直撃弾をモロ受けして、破壊されまくっていた。
惚れました・・・惚れちまいました・・・・惚れちまったぜオレ、あいつに!!

そしてその後入学式で、オレは奴を再度目撃することとなった。
奴はなんと「在校生挨拶」というので、中等部総代という肩書きで壇上へ出て来たのだ。
名前は「日下 亜衣」。・・・可愛い名前だ・・・。

オレは心の中で強く強く誓った。今日から牛乳を1日3本飲んで、バナナを3本食って、最低でも2時間は日光に当たって、そんでクラブは絶対バスケットに入って、背を伸ばす!
オレは壇上で流暢な挨拶を述べる亜衣ちゃんに熱い熱い視線を投げかけた。
亜衣ちゃん待ってろ、オレがお前の運命のオトコだ。オレは絶対お前に釣り合うオトコになって見せるからな!!

オレは、亜衣ちゃんがオトコでオレもオトコで、オトコ同士好き合うそういうのが、姉ちゃんいうところの「ジュネ」ものなシチュエーションなのだとかいうことも知らんと、いきなり恋に落ちたのだ。
そんでそんなシチュエーションがこの学院にはわりとありがちで、考太郎も実はそのクチで、オレ達は2人姉ちゃんの『ドウジン』誌でイロイロ勉強したりして、しっかり耳年増になったりするんだが、・・・まあそれは、まだまだ先の話で。

オレの波乱万丈な学院生活は、そうやって始まったのだ。




孝太郎が大好きといつも仰って下さる、さんぽ様から素敵な素敵な、もう一つの「櫻の園」をいただいてしまいました♪

波瀾万丈な真琴くんの櫻綾学園での生活を是非また読ませてくださいね♪

さんぽさん、本当にありがとうございました♪

さんぽさんの素敵サイトはこちら

※残念ながら、閉鎖なさいました。素敵な作品が沢山だったので、とても残念です。。。

「櫻の園」が未読の方はこちらも併せてご覧下さい♪