――― 宣戦布告!―――
By : yue tuyaka
「相模(サガミ)、好きや。付き合って欲しい!!」 夕日の沈みかけたころ、教室で告白した人物は−今井 岬(イマイ ミサキ)。そして…告白された人物は−相模 大介(サガミ ダイスケ)。 岬が相模に告白するまで、この2人の関係は、ただのクラスメートにすぎなかった。 沈黙が続く中、その沈黙に耐えられず先に破ったのは岬の方だった。 「――アホなこと言って、ゴメン!!!」 何も話してくれない相模のそばにいるのが耐えられなくて、岬は教室から逃げ出してしまった。 薄っすらと浮かぶ涙を堪えながら、岬は教室を後にした。 ***** −次の日− 「岬(ミサキ)、次、移動教室だから、いい加減に起きろよっ。もうとっくに前の授業終わってるんだからな!!」 同じクラスの岬と一番仲の良い中尾(ナカオ)が、机に突っ伏していた岬の頭をペシンッと叩いた。 岬は、もぞもぞと、身体をよじりながら、少し動いてまた止まる。――――バッ。 今気がついたかのように、顔を持ち上げて、キョロキョロと辺りを見回す。目は半分閉じていて、近くに立っている中尾の顔を数秒眺めた。 「んん?あ――、中尾おはよぅ〜。じゃ、おやすみぃ〜。」 岬は、声を掛けて、また机に突っ伏して寝てしまった。中尾の額の筋に、薄っすらと血管が浮かび上がってきた。大きく息を吸って、岬の耳元に向って、声を張り上げた。 「起きんかコラー!!!」 中尾の声にビックリして、岬は思わず席から立ち上がって、こう言っていた。 「スッ…スンマセン。分かりません。」 ………。どうやら、授業中に先生に怒られたと思っているらしかった。数回まばたきをしてから、さっきと同じように中尾の顔を見た。 「あれ?中尾、どうしたん?」 「お前、もう授業終わってるの分かってるか?さっさと次の用意をしろ。」 「えー?いつの間に終わったん?次って、何やったっけ?」 ん〜、起きたばっかりで頭働かんわ〜。机なんかで寝るから、身体の節々が痛いし…。ふぅ〜。 「次は、社会科の樋口先生。行き先は、社会科教室。もう、俺、先に行くからな。」 中尾は、いつまで経ってもボーっとしている岬に、痺れを切らして教室を出て行こうとした。 「中尾ー待ってぇや〜。もう用意できたから、一緒に連れてって〜。」 岬は大阪の学校から、この学校に転入してきて、まだ2ヶ月ぐらいしか経ってなかった。速攻で仲良くなった中尾と、行動をともにしているせいで、いまだに岬1人では、移動教室に行くのに迷うぐらいだった。それぐらい、この学校は、大きいらしい…。 なんだかんだ言って、面倒見の良い中尾は、岬を待って、2人で社会科教室へ向った。 岬と雄一が社会科教室に着いた時、ちょうど始まりのチャイムが鳴った。2人とも空いてる席に適当に座った。そのとき、岬の好きな人−相模 大介−が目に入った。相模も岬の方を見ていて、目が合って離せなくなった。 「岬、いつまで空気イスしてるんだ?」 イスに座ろうとして相模と目があった岬は、膝を曲げて座ろうとする所で止まっていた。 中尾の言葉でハッと我に返って、相模から目を逸らした。 「授業始めるからな。みんな席に着いてるかー?」 ドアを開けながら入ってきて、教室を一回り見たのは、樋口先生だった。 この人の授業はおもしろいけど、昨日のことがあって寝付けずに寝不足だった岬には、どんな授業でも苦痛だった。 地図を広げて、先生とみんなが声を上げながら話しているのにも関わらず、岬は寝息を立てて寝てしまっていた。 その時の岬の寝顔ときたら、廻りにいてる同じクラスの男どもの半分以上は、見惚れてしまっていただろう。そう、岬の好きな人−相模 大介−も、例外ではなかった。 そんな岬にも容赦がない樋口先生は、みんながもう少し寝顔を見たいと願っているのを無視して、岬の頭を丸めた地図で殴った。 パコ――ンッと良い音が、社会科教室に響き渡った。 その音を聞いて、きっと誰もが、岬の頭の中は空っぽではないか??と、疑ったことだろう。 「今井、私の授業はおもしろくなかったのか?」 今度ばっかりは、中尾に起こされたわけでもなく、恐れも多い先生だったので、岬はとっさに謝っていた。 「うわっ、ゴメン!何でもするから、補習とテストだけは止めといたって。」 樋口先生は、寝てしまった生徒には限りなく厳しい。補習を受けさせて、小テストをする人なのだ。 拝むように頼む岬を見て、ニヤリと樋口先生は笑った。 「ほほぅ、何でも…ねぇ。じゃあ、この教室の掃除を放課後に1人でしてもらおうか。」 目が点になったと言うのは、まさしくこのことだと岬は考えていた。 「マジでぇ!?えぇ――――――!!!」 そして、放課後…。 岬は1人残って、広い広い教室をしながら、相模のことばかり考えていた。お陰で、一向に掃除が終わらない。 「やっぱり逃げたのが、まずかってんやんなぁ〜。」 はぁ〜っとため息をつく岬の背中には、哀愁が漂っている。 「何であの時、俺、逃げてんやろ……。」 告白した後、お互い沈黙している間、相模はずっと岬の目を見ていた。 強い眼差し……岬が惚れた原因でもあるが、あの時逃げた原因でもあった。 1人で悩んでいた岬は、自分のいる教室のドアが開くのに、気付いていなかった。 「――― 今井。」 ドアが開いた時、岬は窓側に顔を向けて、そこから見えるグラウンドに目をやっていた。 姿が見えなくても、好きな人の声はすぐに分かる。 “それぐらい、ボクは相模のことが好きやねんな。” ゆっくりとドアの方を振り返ると、思ったとおり相模だった。 「さが…み……」 窓の方にもたれていた岬の横に、相模が並んでもたれた。また、沈黙が訪れる。…しかし、今度の沈黙を破ったのは、相模の方だった。 「昨日、何で帰ったんだ…?」 「えっ…?」 少し考えたけど、何でそんなことを相模が言ってるのか分からなかった。もう1度相模が言った。 「俺が話す前に、帰るなよ。」 「だって、相模が何も言ってくれへんから…嫌われてるんちゃうかと思ってんやんか…。」 相模の方を見ると、相模は少し眉間にシワを寄せていた。 「誰も、今井のことを嫌いだなんて言ってない。」 「じゃあ、ボクのこと好き?」 思わず岬は、相模の方に身を乗り出して聞いてしまった。 相模は下を向いて、肩を震わして笑っている。岬は、同じクラスにいてても、相模が笑ったところを見たことがなかった。 「なぁ、相模。顔上げてぇや。相模が笑ってるん見てみたいねん。」 笑いが収まったのか、相模はまた無表情のまま、岬を見つめた。相模のツバを飲み込む音が聞こえる。それぐらい、この瞬間、岬と相模の周りは静かだった。 「もう1度、ちゃんと告白したら、見せる…。」 岬は、3回も告白することになるとは、思ってもみなかった。岬は、今度こそ相模から目を逸らさないようにと、心の中で誓ってから、意を決して相模の目を見た。 相模も、岬の目をずっと見ている。 「相模、好きです。付き合って欲しい。」 答えは………………? ◆END◆ |
艶華ユエ様から、お祝いをいただきましたv
ユエちゃんのサイトは可愛くてハッピーになるお話ばかり♪このお話もとっても可愛くてでもこの後が機になりますよね〜
ユエちゃんまた続きがあるなら読ませてね。
本当にお祝いありがとうございました♪