Act1        朝の風景

幼稚園の朝は騒がしい。

特に、寝起きの悪い子や、おかあさんっこの年少さんは毎朝大きな声で泣くことから始まる。

あれあれ?門のところでママのスカートの端っこ泣きながら握りしめてるのは誰かな??

「うぇ−−−−−−ん」

水色のギンガムチェックのスモック。その裾を大きくめくり上げて、泣いてるのは・・・・・・・・

「ああ、ほら、もう、しょうもない泣くんじゃないわよ!さっさと行きなさい!鈴ちゃんに笑われるわよ」

さっぱりした気性の研くんママは泣いてる息子の頭をパシンっと平手で叩いたものだから、ますます研くんは大きな声で泣く。

「かあちゃんが叩いたよ〜!うぇ・・・・・・・・・」

普段はよい子の研くん、いったい何が有ったのか、今朝はかなり機嫌が悪いようだ。

「ああ、もう!鬱陶しい子ね!年中にもなって泣かないの!ほら、チューリップ組さんがびっくりしてるじゃないの」

「研くうん、泣いてたら、お目めがウサギさんになっちゃうよ。鈴とお教室にはいろ」

怒られている研くんが可哀想だったのか、見かねた鈴ちゃんが研くんの腕をとって教室に向かおうとするのだが、研くんはイヤイヤと首を振る。

「ほんとに・・・・・・・・鈴ちゃん、おばさん帰るから後は頼むわね」

「うん。僕ついてるから」

にっこりと、請け合った鈴ちゃんに、研くんママは困ったような笑顔を泣いてる息子に向けたまま、宜しくねと鈴ちゃんの頭を撫でた。

そのころ、滑り台の上、オオカミ組の男の子達。

「珍しいな、お前の弟あんなに泣き虫だったか?」

「ああ、あいつ、ショック受けてんだろ」

研くんのお兄さんである、眞一くんはけろりとした表情で、するんと滑り台からすべりおりた。

「なにがぁ?ショックだって?」

「けささ、ゲ−ノ−ジンの結婚式がテレビに映ってさ」

「それがどーしたんだよ?わいどしょ−とかってやつだろ?」

「だからさ、鈴ちゃんは着れないって教えてやっただけなんだけどさ」

「なにお???」

「ウエディングドレスにきまってるじゃんか?」

怪訝そうな表情で、眞一は梯子の後ろからのぼってくる、友達を振り返った。

ところがその子も大きな目を見開いて驚愕の表情を浮かべて固まっていた。

「う・・・・うそぉ〜〜」

びぇぇええええ〜〜〜ん!!!!!!!!!!!!!!!

青空の下、園内に大きな泣き声がひびきわった。

その時、こどもげのない眞一が「ブルータス、お前もか・・・」と嘆息したとかしないとか・・・・・・・・

ゆきの園は今日も元気ですvvv