Act2 音楽室
シャンシャンシャン♪ チン♪ ポコポコポコ♪ おやおや、なんだかにぎやかな音が聞こえてきますよ。 ここはゆきの園、なぜか男の子だけが通う、幼稚園なのです。 「はーい、みんな。勝手に音ならすのやめてね〜」 黒いピアノの横で、美紀先生がパンパンと手を鳴らすと、一斉にそれまでの何とも形容しがたい不協和音が鳴りやんだ。 どうやら、年中組さんは5月に行われる、音楽会の練習をしているらしい。 音楽室を、見回してみると、園児達の小さな手には、鈴・トライアングル・ピアニ・カスタネット・ウッドブロッケン。 そのほかに、木琴のばちや小太鼓のばちなどが銘々握られている。 「なぁ、美紀、センセ−−−、俺、鈴なんかやりたくねぇ〜よ」 そんななか、チビのくせに何となく迫力のある綺麗な子が、子供っぽくない口調で一声を放った。 「ごめんねぇ、澪くん。みんなでじゃんけんして決めたとき、澪くんおやすみだったから・・・・鈴嫌いなの?」 ピアノのイスに座ったまま、美紀先生は困ったように首を振った。 「だって、だせぇんだもん」 あげくにこれってピンクじゃんかと、ちぇっちぇっとばかりに澪は不愉快そうに舌を鳴らした。 「せんせぇ、僕が澪くんとかわりましょか?」 木琴の所に立っていた、可愛らしい少年が思案顔の先生ににっこりと提案した。 可愛らしい笑顔のどこかに、4歳児にして世の中を見据えた賢さを感じさせる、不思議な少年だ。 「え・・・・葵くん、でも木琴は君みたいに基礎がないとちょっとね・・・・」 「そんなに、むずかあしいかなぁ・・・・・僕は鈴でもかまへんのやけど」 「そ−だよ、葵ちゃん!そんなわがままな奴とかわってやることないよ。僕と一緒に木琴するって約束したじゃないか!」 葵ちゃんの横に立っていた、祐介くんがずぃっと身体を前に出して、澪をにらみ付ける。 祐介くん、すでにナイトが入ってるようだ。 「こまったわねぇ・・・・・澪くん、今からじゃ木琴は無理だと思うわよ・・そんなに練習期間もないし」 「そーだ、お前には無理だよ!木琴は僕と葵ちゃんがいっしょにするの」 あっかんべーと舌を出す。 「オイ、祐介!俺さまをなめんなよ。そんなもん、たかだか木の棒っきれを叩くだけじゃんか」 先生に言われたときはそれもそうかなと思ったものの、ちょっとばかし音楽を習っている祐介に偉そうに言われ、あっかんべーまでされたものだから澪の生まれ持っての高いプライドがますます意固地になる。 澪の天の邪鬼はどうやらこの頃からのものらしい。 音楽室の中にいるその他のうさぎ組さんは、どーなるんだろうと固唾をのんで静かに成り行きを見守っている。 その姿はさしずめ、うさぎ小屋の角に身を寄せて固まっている、こうさぎちゃんそのものだ。 その時、 「ねぇ、澪くん。僕のトライアングルとかえっこしない?」 緊迫している音楽室に天使のそよ風のような声が響いた。 部屋の隅から、柔らかな天使の微笑みをたたえた優しげな少年が銀色のトライアングルを片手に澪たちの方に歩いてくる。 「そ、そうね。雅之くん、鈴でもいいのね?」 明らかにホッとした美紀せんせいに向かって、雅之はこくんと可愛らしく頷いた。 「はい、澪くん。銀色のトライアングルなら、かっこわるくないでしょ?、かえっこしようね」 にっこりと差し出された、雅之のトライアングルと、ピンク色の鈴を取り替えて、 「ちぇ、しゃぁねぇな・・・・・お前がそういうんなら、これで我慢してやるよ」 ツンと、顎を上げた澪に、ふふっと雅之が微笑むと、ほんの僅かだけ、澪の頬は朱を帯びた。 雅之の微笑に部屋の空気もほわっとなごむ。 「ハーイ、じゃぁ、みんな、始めるわよ〜」 緊張の糸が緩み、バラバラと所定の位置に着いた園児達はそれぞれの楽器をしっかりと持ち直す。 ざわざわと、音楽室が再びざわめいて、演奏する準備が整ったようだ。 「最初は『ナウシカ』、から行くわね」 美紀先生の元気なかけ声にかき消されるような小さな声だったが、木琴のばちを両脇に掲げたままの葵がしたり顔で呟いた。 「ふ−−−ん。あの澪くんにも泣き所があるんや・・・」 「え、なに?葵ちゃん」 いっつも、葵ちゃんの言動にはお耳ダンボの祐介くんは、けげんそうに聞き返す、 「ううん。べつに、なんでもあらへん」 葵は極上の笑みを浮かべてごまかした。 そこは単純で素直な祐介くん。大好きな葵ちゃんの笑顔にころっと、懐柔されてしまうから、なんともかわいいものだ。 どうやら、これもこの頃からの葵ちゃんの得意技だったらしい。 美紀先生のピアノに続いて、にぎやかに、可愛い合奏が始まる。 曲名はアニメ映画の主題歌をアレンジした「ナウシカ」。 彼らが愛を奏でるのは、どうやらまだまだ先のことのようですね。
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★高遠もも様並びに【桃の国】のファンの皆さまへ★
お・・・・・怒らないでね〈汗〉
これはあくまでパラレルですから(^^;)
えっと、澪&雅之がお気に入りのもも様の要望で、このような運びとなりましたv
ここにゲスト出演してくださった、葵・祐介くん、両名に心から、感謝いたします(*^_^*)
★お客様各位★
懲りもせず、ご要望が有ればまた書きたいと思っています〈笑〉
もし、何か有ればフォーム・メール・BBS等でおきかせください(^-^)