Crystals of snow story

*10年分のチョコレート*

2001バレンタイン企画

ピンクや、グリーンのセロファンに包んだ。

白と、水色の綺麗な袋に詰めた。

お口の所をくるくるクルリンとロールしてる、可愛いリボンを巻いて、ハート型の金色の留め具で留めた。

「気をつけるのよ〜」

「はーい、ママ」

手を振って見送ってくれたママに大きな声で返事した僕は、風はとっても冷たいけど、ほっこりとした柔らかな日差の中、スキップしながら、研クンの家へと向かったんだ。

眞一さん、喜んでくれるかな?

『これ、鈴ちゃんが作ったの?すごいね、ありがとう』

って言ってくれるかも。

「うふふ、なんてね♪」

胸に抱えたチョコレートの甘さが、僕の中にも染み込んでくるような感じがした。

あれ・・・?なんだろう??

研クンの家の門の前に女の子がいっぱいいる。

植木の塀に囲まれた、研クンのお家の門の前に、お姉さん達が5.6人固まっている。

中にはママみたいに大きな人もいて、あの人たちは中学生かもしれないな。

みっけ!山茶花の木の向こうに立ってるの、眞一さんだ〜

眞一さんが、優しい笑顔で、女の子達と談笑しているのが緑色の葉の間からちらりと見えた。

それ、ダッシュ!

「ちょっと、まちなさいよぉ」

僕が道を横切って急いで駆け寄ろうとしたら、新しく現れた眞一さんと同じ年くらいの3人組に前をふさがれてしまった。

「あ・・・・・あの?」

前につんのめるようなかたちで見上げたお姉さん達の顔はとっても怖い・・・・・・

思わず視線を下にずらすとお姉さん達の手にもチョコレートらしい包みがあった。

「あんた、鈴とか言う子でしょ!」

だ、だから?なぁに・・・・?

「うん・・・・・・」

小さく頷くと、おでこをピシッと弾かれた。

「チビのくせに、生意気ね!!!ちょっと可愛いからって、眞一くんにチョコ渡すなんて100年早いわよ」

「そうよ、そうよ、同じクラスの私たちが手渡すんだって、大変なのに、とっとと、家に帰りなさいよ」

な、なんなのぉ・・・・・・・・こ、こわいよぉ〜〜

何を言われてるのか理解できなかった僕は、ともかく彼女たちの剣幕が怖くて、脇をすり抜けて眞一さんの方に走ろうとした。

その時だった。

「すごい子ね!!私たちをシカトする気!!」

ドン!!!!

すり抜けかけた右肩を強く突かれて、大きくよろめいた僕はとっさにチョコを護ろうと抱きかかえたまま、派手に転んでしまったんだ。

「あ、眞一クン、中学生に連れられて、どっかにいっちゃうわよ、里佐」

「ヤダ!こんな子に構ってないで、追いかけなきゃ!」

「美也ちゃんも早くいこ」

「じゃぁね、チビちゃん、バイバイ〜」

のろのろと起きあがった僕に勝ち誇ったようにフンっと笑うと、お姉さん達は行ってしまった。

「昨日、ママが買ってくれた、ラッピングなのに・・・・・」

袋に付いた砂汚れを払おうとしたら、腕の中のチョコレートが、カッシャカッシャっと悲しそうに啼いた。

「ヤ・・なんで・・・・・・・?ヤダ・・・ふ・・・・・ふぇ・・・」

胸がズクンっと大きく疼き、目の前にある研クンのお家がぐにゃりと揺れた。

チョコ、僕の作ったチョコが割れちゃったよぉ・・・・・・・・・・

6粒目も食べる?