Crystals of snow story
*アルカデアをさがして*
[4]
「やぁ・・・や・・・兄さん、許して・・・」
ぞろりと這い上がってくる、自分自身への憎悪感と初めて覚えた快楽との狭間、兄が僕の奥深くを弄ぶ指の動きに呼応するように僕の腰が淫らに動いた。
「ふふ・・・なんだよ、純。
今日はそんなにいいのかよ、いやらしい身体だよな、やらしーく蠢いてるぞ、お前」「イヤ・・・イヤ。。。。」
シーツの立てる衣擦れに、濡れた音が暗闇に混じり始め、兄はさも楽しそうに僕の顔をのぞき込んだ。
綺麗な鬼の瞳に、愉悦と蔑みが交差する。
「いいんだろ?素直にそういえよ」
耳元で囁かれ、僕は必死にかぶりを振る。
でも・・・・・許してと、止めてと言葉は紡いでいるのに、僕の身体はもっと、もっとと、愛撫がもたらす快感を求めて、兄の指をくわえ込み、身体を揺らす。
暗闇に白く浮かび上がる兄の顔は、鬼の様相から、琢磨さんへと時折移り変わる。
そのたび、僕は歓喜に身体を震わせてしまう。
琢磨さんに望んじゃいけない、違う違うと何度否定しても、琢磨さんを汚しちゃいけないって思っても、僕の心の奥深くが求めてしまう。
今、僕を抱いているのは琢磨さんならいいのにと・・・・・
兄の異常な行為を琢磨さんとの愛の行為に幻想がすり替えてしまう。
『今日は純くんに会いに来たんだ。
今日誕生日なんだろ?』優しく微笑んで、僕にプレゼントをくれた人。
『真っ赤になっちゃって可愛いなぁ、純くんは。僕がキスマーク付けたくなるよ』
悪戯っぽく笑って、そう言ってくれた人。
キス・・・・して欲しい。
あの人に、抱きしめられたい。
あの人は、きっと優しく、力強く僕を・・・・・
そう思った瞬間。
「純・・・・・じゅん・・・・」
僕の名を呼びながら、兄が僕の中へと押し入って来た。
圧迫感に喘ぐと、唇を塞がれ、喘いだ息ごと舌を絡みとられる。
ん・・・・ぅん・・・・
ああ、琢磨さん、少しぐらい乱暴でも、気持ちいいよ、あなたのキスなら・・・
切ない夢に、僕は目尻から一粒の涙を零した。
はっ・・・・はぁ・・・・
兄の動きが段々と早くなり、僕の息も合わせて上がる。
普段なら、兄が果てるのをただじっと唇を噛みしめて待っているだけなのに、僕も兄の動きに合わせて、甘い声をあげながら、快感を貪る。
「あぁ、あぁ・・・・も、もう・・・・だめ・・・ぼ・・・く」
「じゅん?・・・純・・純・・純・・・」
一瞬、不思議そうに僕の名を呼んだものの、兄も普段以上に、感情が高まってしまったのか、果てるまで僕の名を呼び続けた」
「ぁ・・・・あぁああああああ」
僕が先に、僅かに痙攣しながら、熱を迸らせ、兄はそんな僕を一層強く抱きしめたあと、僕の中へ果てた。
たゆたうような、喜悦の余韻に浸りながら、僕は心の中でずっと呪文のように呟いていた。
琢磨さん、琢磨さん、琢磨さん・・・・・と
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